メンズ美容市場は2026年も伸びる?狙うべき4カテゴリーをデータで読み解く

化粧品業界

「メンズ美容市場は伸びているらしい。うちも参入すべきだろうか」

私のもとには、新規事業を検討する企業からこうした相談が年々増えています。今回は、2026年のメンズ美容・男性化粧品市場をデータで整理しながら、新規参入するならどのカテゴリーを狙うべきかを、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

メンズ美容市場に何が起きているのか

メンズ美容市場に何が起きているのか

まず押さえておきたいのは、2026年のメンズ美容市場を「若い男性が化粧をするようになった」という現象だけで判断してはいけない、ということです。今、市場で起きている本質的な変化は、美容が一部の美容好きの男性のものではなく、日常的な身だしなみや肌管理として定着し始めていることにあります。

データを見ても、それは裏付けられます。インテージの調査によると、男性化粧品市場は2024年に497億円となり、前年比114.8%、2019年比では約1.8倍まで拡大しました。中でも男性の基礎化粧品市場は438億円、前年比115.7%です。

一方、矢野経済研究所の調査では、2024年度の国内化粧品市場2兆5,800億円のうち、男性用化粧品市場は構成比5.2%にあたる1,330億円と推計されています。

「497億円と1,330億円、数字が違うじゃないか」と思われるかもしれません。これは調査対象の範囲や算出方法(インテージは消費者の購入データ、矢野経済研究所はメーカー出荷金額)が異なるためで、どちらが正しい・間違っているという話ではありません。市場調査を読むときに大切なのは、規模そのものの数字よりも、同じ調査の中で市場がどちらの方向へ動いているかを見ることだと、私は考えています。

そしてこの点において、複数の調査に共通しているのは、男性の美容・スキンケア需要が拡大しているという事実です。

さらに興味深いのは、この成長を支えているのが「美容男子」と呼ばれる一部の層だけではない、という点です。インテージの調査では、男性の基礎化粧品購入率は2019年の30.4%から2024年には33.2%へ、購入者1人当たりの購入金額は1,869円から3,131円へ、約1.7倍に伸びています。しかもこの伸びは20〜30代だけでなく、60〜70代でも2019年比1.5倍という数字が出ています。

つまり、「美容をする男性そのものが増えた」ことと「1人あたりが使うアイテム数が増えた」ことが、同時に起きているのです。洗顔だけだった人が化粧水を使うようになり、化粧水だけだった人が美容液を手に取るようになる。この「一人当たりカテゴリー数の増加」も、市場拡大を支える重要な要因だと私は見ています。

「男性用にしただけ」の商品では勝てない

「男性用にしただけ」の商品では勝てない

ここで新規参入を検討する皆さんに、一つ注意していただきたいことがあります。それは、女性向け商品のパッケージを黒やネイビーに変えて「MEN」と書けば売れる、という発想です。

少し意地悪な言い方をすれば、これは女性向け商品にネクタイを締めさせただけの商品です。ネクタイをつけたところで、その人の悩みを解決してくれるわけではありませんよね。

重要なのは、「誰の、どんな悩みを解決する商品なのか」を明確にすることです。同じ40代男性であっても、「若々しく見られたい人」「清潔感を高めたい営業職の人」「シミや乾燥が気になり始めた人」では、購入する理由がまったく違います。男性化粧品市場は今後、年齢・ライフスタイル・美容経験によって、ニーズがより細分化していくと考えておくべきでしょう。

もう一つの課題は、メイクアップ領域に見られます。富士経済の調査では、青髭などをカバーするBBクリームは伸びている一方、その他のメンズメイク商品についてはリピート購入の獲得に課題があると指摘されています。話題性だけで初回購入は取れても、「毎月使い続ける理由」を設計できなければ、市場には定着しません。

狙うべき4つのカテゴリー

狙うべき4つのカテゴリー

こうした背景と課題を踏まえたうえで、私が新規参入を検討するとしたら、次の4つのカテゴリーを優先順位順に見ていきます。

①スキンケア・オールインワン

まず検討したいのがスキンケアです。特に私が注目しているのは、「オールインワン+機能性」という組み合わせです。

富士経済によると、メンズ整肌料市場は2025年に326億円、前年比4.5%増が見込まれています。中でもオールインワンや美容液、モイスチャークリームなどを含むカテゴリーは2023年に前年比約30%増、2024年にも前年比約15%増と、市場をけん引する存在になっています。

ここには男性市場ならではの事情があります。「化粧水をつけて、乳液をつけて、美容液をつけて……」という工程を楽しむ人も増えてはいますが、多くの男性にとってはまだ、「できれば簡単に済ませたい。でも効果は欲しい」というのが本音です。だからこそ、保湿・毛穴・皮脂・ニキビ予防・エイジングケアといった「悩み解決型」のオールインワン設計は、相性がよいと考えられます。

②美容液・スペシャルケア

次に注目したいのが美容液です。インテージの調査によれば、男性の美容液市場は2019年比で4.9倍まで拡大しています。クレンジングやパックといったスペシャルケア領域も伸びています。

これはかなり重要な変化だと、私は捉えています。美容液は「とりあえず清潔にしておく」という身だしなみ需要ではなく、肌をより良い状態に近づけたいという、積極的な美容需要から生まれるアイテムだからです。

言い換えれば、メンズ美容市場は「洗う」から「整える」、そして「改善する」へと段階を進めているのです。だとすれば、新規事業として単なる「男性向け化粧水」を投入するよりも、「毛穴が気になる30代男性向け美容液」「乾燥とテカリを同時にケアする美容液」「40代男性向けエイジングケア美容液」など、悩みを具体化した商品のほうが、市場でのポジションを作りやすいはずです。

③日焼け止め・UVケア

UVケアも有望なカテゴリーです。インテージの調査では、男性の日焼け止め市場は2019年比で2.0倍に拡大しました。

男性の日焼け止めには、「ベタつく」「白くなる」「毎日塗るのが面倒」という心理的なハードルが、まだ根強く残っています。裏を返せば、これは「男性が使いたくない理由」を一つずつ取り除いていけば、そのまま商品価値になる市場だということです。

「ベタつかない」「白浮きしない」「洗顔料で落とせる」「朝のオールインワンの延長で使える」——こうした設計は、UVケアを単なる「美容アイテム」ではなく「日常生活のケア」として提案する上で、有効なアプローチになるでしょう。猛暑や紫外線対策への関心の高まりも、この提案を後押ししてくれます。

④BBクリームなどのライトメイク

最後にメンズメイクです。ただし私は、いきなりアイシャドウやリップといった本格的なメイク市場を狙うより、BBクリームやコンシーラーなどの「補正系」商品から検討するほうが、参入のハードルは低いと考えています。

先ほど触れた通り、富士経済の調査でも、青髭などをカバーするBBクリームは伸びている一方、その他のメンズメイク商品はリピート購入に課題を抱えています。男性の多くは、「化粧をしたい」というより、「青髭を目立たなくしたい」「ニキビ跡を隠したい」「オンライン会議で顔色を良く見せたい」という具体的な動機から商品を選んでいます。だからこそ、商品を「メイク用品」として売るのではなく、「見た目の課題を短時間で解決する商品」として設計することが、ポイントになります。

実践ポイント:参入可否を判断する3つの基準

実践ポイント

では、自社がこの市場へ参入すべきかどうかを、どう判断すればよいのでしょうか。私は、最低でも次の3点を確認することをお勧めしています。

1.自社の強みと男性の悩みがつながっているか 既存の技術、原料、販売チャネル、ブランド資産など、自社がすでに持っている資産から発想することが出発点です。

2.継続購入される設計になっているか 化粧品ビジネスは、初回購入よりもリピートがものを言う世界です。話題性だけで終わらせず、「毎月使い続ける理由」をあらかじめ商品設計に組み込んでおく必要があります。

3.対象男性を具体的に説明できるか 「20〜50代男性」という設定では広すぎます。「30代、営業職、肌のテカリと毛穴が気になり始めたが、スキンケアは面倒だと思っている男性」まで具体化できて初めて、商品・広告・ECページの設計が一気に進みます。

まとめ|2026年のメンズ美容市場は「男性向け」から「悩み別」へ

まとめ

2026年のメンズ美容市場を考えるうえで重要なのは、市場が大きくなっていること自体ではありません。男性の美容行動そのものが、深くなっていることです。

洗顔だけだった人が化粧水を使い、化粧水だけだった人が美容液を使う。そして、毛穴、乾燥、皮脂、UV、エイジング、青髭など、自分の悩みに合わせて商品を選ぶようになっている。

私が新規参入を検討するなら、優先順位は①オールインワン・スキンケア、②美容液・悩み特化型ケア、③UVケア、④BBクリーム・補正系メイクの順で見ていきます。

メンズ美容市場は、確かに成長市場です。ただし、「市場が伸びているから参入する」のではなく、「その市場の中に、自社だから解決できる男性の悩みがあるか」——そこまで考えて初めて、参入の可能性が見えてくると、私は考えています。

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