■世界を席巻するKビューティーの強さとは

韓国の美容ブランドは、短期間でグローバル市場に台頭しました。
innisfree、ETUDE、CLIO、rom&nd(ロムアンド)、TIRTIRなど、SNS発のブランドが次々に登場し、日本や東南アジアで圧倒的な人気を誇ります。
その背景には、「スピード」「共創」「デジタル統合」を軸とした、韓国特有のブランド育成の仕組みがあります。


■1. 市場適応力の速さ ― “超短サイクル”の商品開発

韓国ブランドは、企画から発売まで3か月以内という驚異的なスピードを実現しています。
これは、ZARAのファストファッションに近い発想で、「市場の声を即反映」する体制が整っているからです。
OEM企業が大量に存在し、開発・生産・マーケティングが垂直統合されていることで、トレンドを逃さない開発スピードを実現しています。

また、試作品をSNSで公開してリアルタイムで反応を確認し、データに基づいて仕様変更を行う“共創型開発”も特徴です。
この「マーケットイン型開発」は、日本のような「完璧な製品を時間をかけて出す」文化とは対照的です。


■2. ブランド拡散の鍵 ― SNS×インフルエンサー共創

韓国ブランドの多くは、最初からグローバル展開を前提にしています。
特にInstagram・TikTok・YouTubeを中心に、「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」を活かしたプロモーションを展開。
ブランドが語るよりも、ファンが語る世界観を作ることを重視しています。

rom&nd(ロムアンド)は、YouTuber出身のメイクアップアーティストが立ち上げたブランドで、動画での“色の見え方”“質感レビュー”が話題に。ユーザーが共感できるリアルな体験共有こそがブランド拡散の源泉となっています。


■3. 育成支援のエコシステム ― 産業全体でブランドを育てる

韓国政府と民間が一体となった「ブランド育成支援」があることも大きな特徴です。
中小企業庁やKOTRA(大韓貿易投資振興公社)は、スタートアップ支援・輸出支援・展示会出展などを体系的にバックアップ。
さらに、オリーブヤングなどの国内リテールプラットフォームが、新興ブランドのテスト販売の場を提供し、ヒットすれば一気に全国展開・海外進出という“エスカレーター式の成長ルート”が存在します。

つまり、韓国では「企業単体で育てる」のではなく、産業全体でブランドを育てる仕組みが整備されているのです。


■4. 日本企業が学ぶべきポイント

韓国の仕組みをそのまま真似るのは難しいですが、次の3点は日本でも応用可能です。

  1. スピード×柔軟性を重視した商品開発体制
     完璧主義ではなく、“まず出して反応を見る”という姿勢。
  2. SNS共創マーケティングの仕組み化
     公式投稿だけでなく、インフルエンサーやユーザーを巻き込む“UGC育成設計”。
  3. 業界横断の支援・コラボ体制づくり
     官民連携・流通支援・クリエイター共創など、ブランド育成の“エコシステム”を整える。

■まとめ:Kビューティーが教えてくれる「ブランドを文化にする力」

韓国のブランド戦略は、単に商品を売るのではなく、文化・世界観を共に作るプロジェクトとして機能しています。
スピード・デジタル・共創を軸に、“消費者が育てるブランド”という新しい時代の在り方を示しています。

日本の化粧品業界も今、「つくる」から「育てる」へ
Kビューティーの仕組みは、次の時代のブランド育成モデルを考える上で、貴重なヒントとなるでしょう。