マーケティング担当者なら一度は気になったことがあるかもしれません。ニューエラのキャップのつばに貼られたシールをあえて残す人がいる一方で、ユニクロのパンツに貼られたサイズシールを外し忘れて恥ずかしい思いをする人もいます。同じ「シール」であるにもかかわらず、まったく逆の消費行動が起きるのはなぜでしょうか?この記事では、マーケティングの視点からその背景を読み解きます。
ニューエラのキャップ:シールが「ブランドアイデンティティ」になる

ニューエラのキャップについているのは、ブランドロゴや正規品を示すシール。紙製で安っぽく見えることさえあるのに、消費者は「本物の証」「カルチャーの一部」として誇らしげに残します。
マーケティング的ポイント
- 正規品の証明:シールを残すことで「本物」であることを主張できる。
- 文化的コード:残すこと自体がストリートファッションのルールとなり、同じ文化圏への所属を示す。
- SNS拡散力:写真や動画で「シール付き」が映えることでブランド価値を強調できる。
ユニクロのパンツ:シールは「購買補助ツール」にすぎない

ユニクロのパンツについているサイズシールは、購入時には便利でも、買った瞬間から価値を失う存在です。外し忘れると「だらしない」という印象に直結します。
マーケティング的ポイント
- 購買時のみの機能:棚から選ぶための補助にすぎない。
- マイナスのシグナル:剥がし忘れるとネガティブな印象につながる。
- SNSでの広がり方:「うっかりミス」としてネタにはなるが、ブランド価値を高めるものではない。
同じ「シール」でも行動が真逆になる理由

ここで重要なのは、シールに付与されている意味の違いです。
- ニューエラ → 残すことでブランド体験が完成する
- ユニクロ → 外すことで購入体験が完結する
つまり「残す=誇り」となるか「残す=恥」となるかは、ブランド戦略が決めているのです。
マーケティング担当者への示唆

シールやラベルは単なる付属品ではなく、消費者の行動を左右するマーケティング要素です。
- ニューエラ型戦略:シールを「誇示できるアイコン」として残す設計 → ブランドの差別化につながる
- ユニクロ型戦略:シールを「一時的な購買補助」として設計 → 剥がすことで完成するブランド体験
この違いを理解すれば、単なる包装材やラベルを「ブランド戦略の武器」として活用できるのです。
まとめ

ニューエラのキャップのシールは「残すことで価値が高まるブランドシンボル」、ユニクロのパンツのサイズシールは「外さないと価値が下がる一時的な補助ツール」。同じシールでも、その役割が違うだけで消費者の行動は真逆になります。
マーケティング担当者にとっては、この差を理解することが重要です。なぜなら、消費者は商品そのものだけでなく、「シールひとつ」からもブランドを評価しているからです。